掌編小説

休息地にて

・アトリエの休息 彼女は、彼の庭によく遊びに行った。彼女は他に行くあてもなかったし、何より変わらない風景の庭に退屈していた。彼の庭はアトリエになっていて、画材やら模型やら、スケッチに使う道具で散乱していた。 絵の具の混ざった匂い、デッサン模…

ある季節のこと

またあの子のことを思い出し、冬だなと思うけど、そんなことを思考しているうちは何も変わらなくて、僕は勝手に彼女の思想に対し、手紙を送ろうと思います 熱々のおでんを寒空の下で食べる。冬到来、ある帰り道を思い出す。あの時の木枯らしと同じみたいだ。…

あ、と発して「」

離人症なんですか、それとも感覚鈍麻ですか? 聞かれてもしゃきっと回答はできない。何か分からないものだから。よくあること、って思いこめばそれは無になってなかったことにならないのか。

底に沈めて見えないほどの

いつも通り集会所に行くと、心地よいキーボードの操作音が聞こえる。部屋の管理人の音だ。管理人は何を仕事にしているかはよく知らないけど、事務職をしつつ、悪い社会と戦っていると噂では聞く。私はそんな管理人を尊敬している。 集会所には、本棚に詰め込…

ごとーさんのこと

ある活動家に恋をしました。 彼は一回り、いや二回りも離れていた大きな存在でした。ぼんやりしているところもあったけど、どこかに納得させる大きい背中がいつも私の前にはあったのです。 彼は寡黙な人でした。おそらくですが、彼は見かけより小さい存在で…

rain day

私は、辞書を閉じた。じめじめとした梅雨の一時、雨宿りという名の時間潰しのために図書室にいた。迎えが来るまで、後30分。