「不器用な猫たち」

彼女は部活を終え、帰り支度をしていた。
ふと、部員の1人は彼女に向かってこのように言った。
「あなたっていつも人の心が読めていないよね。やってることが空回りしている」
彼女は、その事実を知っていた。人一倍努力しているつもりだった。
「あなたは、人の気持ちを読もうとすらしない。もっと、言葉を考えてから発した方がいいよ」
彼女は、その言葉に激怒した。彼女は彼女なりに努力しているつもりであったからだ。しかし、論点がズレテいただけだったのだ。
発言者が、
「あなたは強い言葉を使いすぎだ。だから、相手から強い言葉で返されてしまう。それは心配だ」
とでもいえば丸く収まっただろうが、そんなゆとりは誰にもなかった。発言者はそれを伝えたかったが、うまく言えない。
 
暑い夏の部活、渇きを覚える。空はまっしろで、何もなくて、真逆なんじゃないかと思った。私はそんなふうにはなれないって。
 
それは彼女と発言者だけの問題ではなかった。彼女には好きな人がいた。しかし意中の人は彼女に対し、暴力的な面があった。暴力といっても、物理的なことではない。モラハラみたいなものだった。彼女はよく意中の人からお叱りを受けていた。意中の人は、彼女のために怒っているんだという。これは愛だと。違う、愛と見せかけたストレス発散行為だったのだ。彼女は毎回強い言葉で反論する。そして、言葉でぼこぼこにやられる。それが少し快感だとさえ思っていた。
 
翌日
偶然、部活はOFFだった。
普段は、彼女と部活の友人は一緒に帰る。しかし、その日は彼女は1人で帰っていた。
彼女は、昨日の発言に激怒した。しかし、会いたくないなと思った。今日くらいは一人にさせてくれと思った。
しかし、友人は彼女のことを追いかけてきた。別の友人に聞いて場所を突き止めたという。彼女はうざったく感じていた。そんなことは必要ないと思っていた。
「はぁ、探したよ。昨日は言い過ぎだった、ごめん」
「そんな軽い言葉で許されると思っているの」
「だって、本当に危険だと思ってたから」
「私のためにって、ばかばかしい。ほっておけばいいのに」
「いや、同じ部活の人間としてそれはできない」
「そう」
 
言葉をうまく使えない。まだ、足りない。意思疎通が難しい。壁を感じる。
 
 
あとがき
この記事は今から4年くらい前に書いた某所でのブログをもとにしています。(記事はもう残ってないけど)
元のブログはストレス発散用として機能していたので、今考えれば、ちょっとした黒歴史みたいなものです。ダークなこともそのブログに書いていたので。
まさか、いまさら物語として帰ってくるとは思いもしませんでした。言葉が絶望的に足りなかった頃のことを思い出しました。言葉って、いつになったら足るようになるのでしょうね。