I miss you

 遠い昔に失った人の話。彼にもう一度会えないかな。

 彼は人前に出るのは向いていない人間だった。彼は、他の人より精神的持久走がなく、闇の世界に逃げ込む癖があった。また、体も丈夫な方ではなかった。
 そのため彼は戯け者を演じ、何も分からないようにして、何も感じないように、自我は胸の奥に息を潜め、それなりな生活を送っていた。
たった、それだけのことかと思われそうだが、彼にはそのことをさも重大問題のように考えていた。
 
 彼はある時、「人権」という活動に出会った。そこで、彼は自分のことを話していいということを学んだ。そして隠れていた自我が現れ、彼が放棄していた、人間らしい生活を送れるようになった。
 彼はようやく普通で人間的な生活を送れるようになった。人権に出会わなかったら、一生この楽しさは味わえなかっただろう。「人権」は彼の人間らしさの実現を助けてくれた。
 だから彼は「人権」には仕事だと思って、敬意を払ったほうが良いと思っている。また、彼にとって「人権」は償いでもある。人間らしい生活を送ることと引き換えに、彼は闇の世界での、契約、友人を放置してきた。彼の心の中にはまだ、たくさんの闇の世界の住人が住んでいる。また、契約を振りかざす住人もいる。それは彼にとって大事な時にいつも襲ってくる……。
 
 そもそも、いつから闇の世界の住人が彼の中に住んでいるのか。それは確か小学生の頃からだ。当時、彼はストレスに耐え切れなくなった。そこで人生は終了するはずだったが、それでも彼は生き延びたいと思った。そこで、猶予をもらい、代償として感情の一部を捨てた……。それから闇の世界の住人が心の中に住んでいる気がする。
それは彼の2番目の罪。1番目の罪とは生まれてくること。2番目の罪は闇との契約だ。「人権」の活動を頑張れば、その心の中に住んでいる闇の住人も救われると思っている。だから彼にとって「人権」は贖罪なのかな。彼の求めている人間らしい生活は分からないままだ。確かにここにあったはずなのに、泡のように消えたりする。怖いな。なんとなくだけど。
 彼はこの少し変わった生活を否定はしない。彼の人生はおかしな部分が多い。彼はそこで「もの書き」という生き様を手に入れた。彼は、人間の醜い生き様、崩壊していく様を、記録することができる。それは狂気である。彼が世界に残せる、唯一の世界に対する挑戦状なのだ。
 狂っていると言われても結構。彼はそんな生き方しかできない。これが本当に狂っている人間なのかもしれない。笑える。もう笑いしかない。こんな人間を必要としてくれる人なんて少ないでしょう。いたとしても、それはただの変人だよ。そんな闇を心に抱えていたら、普通の生活はできないだろうしな。