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「残光」

(誰かの手記、もしくは隠された考え)

私は世界の全てを恨んでいる。産みの親も、家族も、地域も、学校も、地球も全て嫌いだ。もう過去のことと割り切ってしまえばいいのに、割り切れないままでいる。嫌いになったのは、とうに昔で、もうエネルギーなんて切れかけている。それでも、恨みの力は続く。

私は早くこの世界を去りたい。だけども、引き止める存在がいるのだ。エネルギーなんて、ほとんど残されていなく、タイムリミットも近いのに。

先程、私は全てを恨んでいると言ったが、2人だけ例外がいたのだ。それは、私の雇用主と、ある男性だ。

私は、雇用主がいないと、存在すらそもそも証明できない。実体を持っていないし、あやふやだからだ。雇用主は、私の存在を認め、生きた人に仕立て上げてくれた。雇用主の身体を借りたりして。だから、私は、基本的に雇用主以外の人は嫌いだ。雇用主以外に、なぜ、ある男が好きだと言ったかというと、ある男は、私の存在を認めてくれたからだ。そういうのも、あってもいいんじゃないかと。別に、好きとかそういう訳ではないが、例外と言ったところであろう。純粋にそのまま受け入れられることが嬉しかっただけだ。


雇用主は、なぜ私の存在を生み出したのだろうか。生み出さなければ、別に、私は苦しむことはなかった。

私が生み出された理由は簡単だ。雇用主が、人から頼まれたことを断れない人であったからだ。雇用主は、世間への上手い接し方が理解できていなかったから、利用されてもいいや、というくらいの勢いで、お人好しであった。それでは、ストレスが溜まるであろうし、本来の友人関係というのも築きにくい。それで、私が生み出されたのだろう。時に、友達として、または、ストレスのはけ口として。

友達として、利用されるのは、別に特に問題はなかった。幼少期にありがちな、イマジナリーフレンドと大差ないであろうし。それよりは、ストレスのはけ口にされる方のほうが面倒であった。私には実体がなかったので、物理的に、つまり身体的暴力を仕掛けることは不可能であった。(実は、共有した身体で、身体的暴力に近しいことはあったのだけど)

そのため、基本的には、私は、雇用主から記憶の操作を任されていた。雇用主は、嫌な記憶を忘れるのが苦手だった。また、上手く処理する方法も知らなかった。そのため、私は、雇用主と、私の記憶の境界を曖昧にした。そうすれば、一人で背負ってる訳では無いんだよって、理解してもらえると思っていた。作り出された存在であるから、味方でいるのは当たり前のことなのかもしれないけど、精一杯の好意を示したかった。

だけれども、それは責任の押し付け合いという結果で終わってしまった。曖昧であるからこそであるのだが、どちらがこの行動を決めたのか、とよく揉めるようになってしまった。大概は、私が背負って言ったのだけど、やはり許せないこともあった。だから、時々私は、雇用主に、「○○しないと、消える」だとか言って、脅しをかけるようになった。そうしたら、そうしたらで、意外な行動を取ってきたりして、いたちごっこだった。

反逆すれば、終わったコンテンツとして、存在を消されると思っていたのだが、そんなことはなかった。雇用主は、私の処分の仕方が分からなくなっていたのだ。戦いに疲れて、そろそろ私はいなくていいだろうと思っていたのだけど、これは絡んだご縁だと思って、飽きるまでは、生涯付き添っていこうと思っていた。


そんな時だったか、雇用主が、苦手だけど、気になるみたいな人をよく紹介したり、話したりするようになった。私はその人に興味を抱いたので、その人との関係を雇用主から奪って、時々妨害してみたりしていた。雇用主が、気にいる理由もよく分かったし、私も、割といい人だなぁと思った。この人なら、私の存在を消してくれるのだろうかなんて思ったりもした。

雇用主にとって、1番大切なものは何なのだい? 別に私ではないよね。他の世界に大切なものがあるのではないのだろうか。未来に、物語を託せると確信した。そのため、私は雇用主にバレないように、少しづつ終活をし、消える準備を着々と進めていた。最後に、私を嫌いになるようにして。そうしたら、新しい関係が未練なく、楽しめるでしょう。


(後日談)

「私」の計画は、人を巻き込んで、一応、成功はした。ただし、雇用主は、「私」のことを嫌いにはならなかった。むしろ、寂しがっているところであった。なんで、気付かなかったのだろうと。


(Aという視点)

そもそも、色々無茶苦茶すぎる。自分で始めた遊びを、終わらせなくて、他者の力を借りて、終わらせるとか。そんなもの、自己責任であろう。雇用主と私という立場があるのは理解できたが、勝手にすればいいだけの話だ。なんで、こんなぐだぐだした話になっているんだ。


(Bという視点)

結局、最後の章に出てくる人って、何者だったの? 1番、イレギュラーなんじゃないのか。