「領域a」

ここ数日、頭が割れるように痛い。「割れる」という表現は少々、オーバーであるが、彼女にとって、数日に渡っての頭痛というのは経験したことがなかった。そのため、少々オーバーな表現をした。彼女の頭痛の原因など分かりきっているのに。


あの日のままで変わらない我、


残された人の時間というのは止まってしまう。彼女もそうであった。頭痛という体調の変化は、時間が止まったように感じるそうだ。永久のごとく、押し黙った時間のようだと。そんなことはありえないし、痛み止めを飲めば、一時的に痛さは収まる。だけれども、何かを断ち切ってしまったような気がしてあまり気が乗らない。そのため、彼女は余程痛くない限りは、痛み止めを飲まない。

 

作り出された存在というのがあり得ることだとしたら。そんな空想をしたことがある。作り出されたということは、誰かにとって、都合の良い存在でなければいけない。しかし、都合の良すぎる存在というのは、不自然であるし、他者から見れば、異形の姿でしかないのだ。彼女の作り出された存在というのは、無関係な人の手によって壊された。

 

話は、戻るが、彼女が頭の痛い理由とは何か。アディクションの後遺症ままならない。空いてしまった穴を埋めるために、アディクション的行動を取るのだ。そういうのは、とある疾患の感覚に似ているらしい。そんなことをしても、何も変わらないことは分かっているのだけど。

 

加速する世界の中で、あの人たちはどう暮らして行くのだろうか。彼女は、ふと思った。手放してしまったが、情報や世間の移り変わりというのはあまりにも早い、ぐだぐだしていると取り残されてしまう。はっ、彼女もか。彼女自身も、そう思った。だからと言って、対処する術などないけど。

 

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