賞味期限の切れた生クリームのような言葉は必要無くなった
あれは夏のことだったか、頭は揃えたのに流せなかった語りが1つ。今更流したいとも思わないけれど、少し心残りだ。それならばこの大晦に別の語りを流そう。友のために。
僕はいつも街を眺めていた。それが夢か現か、そんなことはどうでもよかった。僕が在ると思えば街は存在していた。少し遠いところに街の明かりがあること、それが拠り所だった。同じ時間のことなのか、それとも遅れた明かりなのか、些細なことだと思えるくらいに美しかった。
いつの時代も終わりというのは突然やってくる。街は少しずつ変わり続けていた。都合の良い解釈ばかりしていた。
「また間に合わなかった」それは夏の言語、変わらなかったのは誰だったか。遠くの街は僕の郷里です。でも、もう眺めたりはしないでしょう。心の中に留めておくことにします。
今日は出航の日です。たまには寂れた海辺の観光地のことでも思い出してください。名称とは案外つまらないものです。彼はとても大切にしていたけれども。ありきたりな言葉で埋めるのは嫌なことです。言葉に縛られない未来を見ます。
僕は夢の共犯者に手紙を書くことにします。それは帰ってこない伝書鳩に託すことにします。
「ーー彼は優しい共犯者でした」